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最高裁判所第一小法廷 昭和31年(あ)2696号 判決 1957年4月04日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人岸星一、同萩沢清彦の上告趣意は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(所論起訴状記載の公訴事実第四冒頭後段の事実は、単に事情として記載されているものではなく、訴因として記載されたものであることは、第一審第一回公判における諌山弁護人に対する検察官の釈明および起訴状の罪名、罰条の記載に照らし明らかである。また、公訴事実第三の事実につき、これに刑法一三〇条を問擬したことの正当であることは、原判決が控訴趣意第一点ロについて説示したとおりである。それ故、所論の違法はいずれも認められない。)

弁護人諌山博の上告趣意第一点、第二点は、法令違反、判例違反を主張するが、本件旭硝子牧山工場従業員組合の看板をとりはずした行為および本件荷物から荷札をとりはずした行為は、原審の認定した事実関係の下においては、いずれも右看板および荷札の本来の効用を喪失するに至らしめたものであることが認められるのであって、これを刑法二六一条の犯罪に該当するものであるとした原判示は正当であり、引用の判例に反する点は認められない。

同第三点は法令違反、判例違反を主張するが、原審の認定した事実関係の下においては、本件旭硝子株式会社中野社宅を社宅二〇数個を含む一の邸宅と認めて、これに刑法一三〇条を適用したことは正当であって、この点に関する原判示は、当審においても是認することができる。所論引用の判例は本件に適切でない。

同第四点は単なる訴訟法違反の主張であり、同第五点は事実誤認、これを前提とする単なる法令違反の主張に帰し、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(第四点訴訟法違反の主張の理由のないことは、弁護人岸星一、同萩沢清彦の上告趣意に対して説示したところと同様である。)

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫)

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